最後の夜が来る前に

Last Dance

Last Dance

 

なんかあっという間に細分化されて、ファンが散らばった結果、早くもしぼみ始めてる感が満載なシティポップ界隈ですが、みなさんいかがお過ごしでしょうか。

 

俺は色々漁っている中で出会ったバンドがたまたまシティポップと名付けられたジャンルに属していて、たまたまその時はそのへんが気分だったわけなので、そればかり聴いてるわけじゃないし、なんなら最近知り合った女の子がパンク好きだったりするもんで、久々にeastern youthとかHUSKING BEEとか聞き直しちゃったりもしてるわけなんですが、それにしても、ほぼアイドルとアニメとボカロとLDH系とK-POP系と次世代イロモノ系に侵食されてしまった邦楽シーンにおいて、久しぶりに創作力と想像力と程よいポップセンスとねじれ感をもったバンドが盛り上がってきてるなーとほくほくしていた矢先なので、ここ最近の流行の移ろいの早さに諸行無常の響きを感じずにはいられません。

 

あんだけ騒がれてたSuchmosとかどこ行ったよ。

ちやほやされ過ぎるのも嫌だけど、かと言って売れないのも困るからって、叙情系なブルーズのアルバムとか作っちゃって、完全に迷走し始めちゃってるじゃんかよ(批判を恐れているわけじゃないが、俺はSuchmos嫌いではないです。でも完全にブレイク前後の、俺らカッコいいことしかやらないんで的な姿勢から生まれたある種の開き直り的なポップネスは間違いなく失われてしまったと思う。NHKの罪は深いよ)。

 

我がAwesome City Clubもいまひとつブレイクしきれないし、yogeeとかceroとかこじらせ系カルチャー女子にしか受けねぇもんなあ、完全に。

 

ってなわけでシティポップというジャンルは、目立った旗印となるアーティストがいないまま、ストリームとしては1本の太い筋になれず、各々が好き勝手に発信して好き勝手に受信して、というインディな流れに戻ってしまっているわけです。

だよね?

だって、シティポップ代表的なアーティスト挙げてみ?

ヒルナンデスとかの視聴層に話してもぜったい伝わらないよ?

 

とまぁ、そんな感じで相変わらずネガティブな書き出しをした訳ですが、そんなシティポップ界隈で、なかなかいいじゃんと思ったバンドを紹介します。

 

Tempalay。

男2女1の3人組で、生演奏と打ち込みやサンプリングをミックスした、ヒップホップ的なサウンドメイキングを駆使しながら、サイケデリック的だったりヴェイパーウェイヴ的だったりする、儚げで、退廃的で、脱構築的で、でもどこかキャッチーなポップネスを含んだ音楽を鳴らしている彼ら。

んー、分かりやすく言えば髭っぽいサイケデリアをceroっぽいサウンドメイキングで鳴らしてる感じだろうか。え、分かりやすくないって?

 

で、僕は彼らの『Last Dance』と『革命前夜』という2曲が特に好きで、一時期好きでよく遊んでた女の子に、同棲していた彼氏と結婚するからってフラれた時に繰り返し聴いて鬱になってたりもするわけです(要するに二股っつーか浮気相手にされてたわけなんだけどいいじゃねーか少しくらい夢見たって)。

 

俺の失恋と彼らの音楽は関係ないだろと思われるかもしれないが、もちろんそりゃそうだ。

でも、Tempalayの凄さは、実はここにこそあるんじゃないかと思っているわけです。

 

彼らの作品の世界観は、もちろんミレニアル世代特有の、ディストピア思想や、未来に安易な希望を抱けないがゆえの逆説的楽観主義が基盤になっていると思われ、事実、歌詞の中にもたびたび世界の終わりや破滅に言及したフレーズがしばしば散見される。

しかしそこには今を楽しむという刹那的なポジティヴィティや、恋人や気の合う仲間との時間、アーバンライクな情景やクラブシーンなどを彷彿させる単語も羅列され、退廃的だったり諦観的だったりしながらも、不思議とそこに破滅的な暗さは感じられないのだ。

 

だからまったくパーソナルではない、どちらかといえば徹底的な客観的視点からの描写であるにもかかわらず、好きな女にフラれたという極めて主観的な気分にさえコミットしてしまうという、開かれた部分がそこにはあるのだ。

 

この閉じられていない世界観こそ、ポップネスを獲得するのに不可欠な要素であり、聴く者の心理状況を投影できる余白を持ちながら、なおかつ自分達の心情を反映させるタフな音楽観を持ち合わせることで、Tempalayはリスナーに共感覚的な情景を見せることが出来るし、だからこそキャッチーたりえているのだろう。

 

とはいえ、安易な予定調和を回避するべく組み上げられた、プログレッシブ的な構成や、カルチャー好きな洋服屋のにーちゃんねーちゃん的なヴィジュアルは、本当の意味でのポップアイコンには程遠いし、彼らがシティポップの旗頭たりえるとは到底思えないので、引き続きシティポップ界隈に漂い始めているアングラ感、マイノリティ感が再び払拭されることはないんだろうけど。

 

まぁ、でもこれがSNS社会ってやつなんでしょうね。

最近のヒットチャートとか本当によく分からないんだけど、別にそれで困ることとか(職場の飲み会からのカラオケ二次会でも行かない限り)ぜんぜんないし。

 

ネガティブなんだかポジティブなんだか、褒めたいんだか貶したいだかよくわからない文章でした、今回は。

以上。