夜逃げしたいほどの切なさなんてどこかに置いてきた

yonigeである。

 

 

さよならプリズナー

さよならプリズナー

 

 

 

顔で虫が死ぬ

顔で虫が死ぬ

 

auのCMソングなんかも書いちゃって、おそらくネクストスター候補の筆頭バンドとしても認知度が高まりつつあるであろう彼女達。

何を隠そう僕はけっこう好きです。

 

あ、auのやつは別な。

 

あれは完全に周りの大人たちが作らせた感が満載で、もしかしたら牛丸さんとごっきんさんの当人たちがいちばん笑えてない皮肉な曲なんじゃないかと思う。

 

明らかにその前後の作品群とベクトルが違いすぎて、ぶっちゃけ札束の匂いしかしないし、炎上覚悟の言い方をしてしまえば、あれは音楽的枕営業みたいなもんでしょ。

 

もちろん一般的な意味での枕営業ではないけれど、自分らが好きな音楽を好きにやる基盤を作るために、旧来のファンに多少そっぽ向かれるのも覚悟の上で、音楽的に、世間に抱かれに行った曲なんだろうなと個人的には感じている。

 

たぶんこの文章を本人たちが見たら全力で否定されるだろうし、俺は間違いなくアボカドぶつけられて殺されるだろうが。

 

ちなみに最初にも言ったように俺は彼女たちの音楽は好きなので、けっして腐すつもりはないので悪しからず。

というかCMソングやらせるにしても、もうちょっとなんとかしてあげられなかったのか。周りの大人たちよ。

 

とにかく、40のオッサンが、まさにアボカドを後頭部に投げつけられて久しぶりに卒倒しそうになったのが、こんなに青臭いどストレートのギターロックを奏でる女子2人のバンドだったわけで、今日はその辺のことを語らせてもらいます。

 

最近のミュージックシーンって、ある程度のことはほとんど先達がやり尽くしちゃって、そこで注目されるには何かしらの仕掛けが必要で、それは歌詞のヘンテコさだったり、ヴィジュアル含めたポップな変態さ(あくまでコスプレレベルであってマジな変態だと嫌われるので要注意)だったり、言ってしまえばYouTuber的な仕掛けが必要になってきているのではないかとずっと思っていて、だからこそのドラゲナイだったりオオカミ集団だったりゲスな乙女だったりするわけだろうと。

 

もちろん外殻的なところを削ぎ落として行くと、意外とすっぴんの表情がイケてたりするものもあるんだけれど、たぶんそれだけで勝負を挑んだところで勝つことは出来なかったんじゃないかと想像している。

 

これは是か非かという話ではなくて、音楽をビジネスとして成立させていくには単純な曲や音のクオリティだけでなく、ヴィジュアルやキャラクターまでを含めたパッケージ全体のプロデュース能力が求められる、そういう時代になってしまっているだけの話だ。

 

だからこそそんな中で、ヴィジュアル的な仕掛けも特になく(牛丸のハーフ美人感や、お父さんがAC/DCの人だとかっていうポイントはあるけれど、彼女たちはそれを特に売りにしてないはず)、音楽的にもどちらかと言えば日本におけるゼロ年代のギターロックや、weezerに代表されるパワーポップの範疇に収まるサウンドメイキングに留まっているように聴こえるし、そういう意味ではごくごくまっとうにシンプルなギターロック・バンドであるはずなのに、なぜか彼女たちの音楽は新鮮に響くのだ。

 

いや、新鮮というのは違うかな。

オッサンがこういう事を言うと気持ち悪がられるだろうが、なんというか、学生の頃の恋愛を思い出すというか、あの時期特有のなんとなくムズムズする感じ、Awesome City C lubでいうところの『青春の胸騒ぎ』を感じさせてくれるからかもしれない。

 

卒業して、就職して、生きていく金を自分で稼いでいくために働いて、その中で固まりつつある自我をすり合わせながら遊星のごとく引き合った異性と恋に落ち、また別れてを繰り返すうちに恋愛の何たるかを見失い、ロマンスを忘れた中年のオヤジに対してさえ、その感情は失われたのではなく、心の奥のどこかで固く閉ざされた箱の中にしまわれていただけなんだということを思い出させてくれるのが、yonigeの音楽なのだ。

 

この個人的な感覚を一般に敷衍するとすれば、それは即ち、どの世代のどの性別の人間であっても、各々が心のどこかに持っているある種の琴線に、yonigeの音楽はシンプルであるが故に、それぞれの気持ちに合わせて形を変えて触れてくれる、ということになるだろう。

 

だからこそ彼女たちの音楽はそのフォーマットのあり方に関係なく、様々な人達を虜に出来るのだろう、と思う。

 

そういう意味で言えば、まだまだ音楽シーンは捨てたものではないし、これからもこうして時代の潮流から外れつつあるオジサンの心をぐっとわしづかみにしてくれるバンドやアーティストが出てきてくれる可能性もある。

それならば、パッケージとしてよく出来た音楽はそれはそれで素晴らしいけれど、そんなもの関係なしに、みんなが持っている琴線をシンプルにくすぐってくれるストレートな音楽の出現を願ってやまない。

 

なので周りの大人たちに告げたい。

変にいじくんなよ、と。